<東芝>株主総会で「不正会計」発言の“いまさら感”

2015年春に不正会計が発覚してから、東芝は定時、臨時合わせて株主総会を6度開きました。その6度目となった10月24日の臨時株主総会で、綱川智・東芝社長ら経営陣は「不正会計」という言葉を初めて使いました。過去5度の株主総会では、ずっと「不適切会計」と表現していました。今になって言い方を変えたのはなぜなのでしょうか。【毎日新聞経済プレミア】

 ◇第三者委の報告書で

 東芝は、15年春に不正会計の疑いが発覚した。同年7月に第三者委員会が意図的な利益水増しを認定したが、その報告書には「不適切な会計」と書かれた。多くのメディアはこの前後から「東芝の不正会計は……」という表現を用いたが、東芝は、公式な発言や文書で「不正会計」という言葉を使わず、「不適切会計」と言ってきた。

 同年12月には、金融庁から金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)を認定され、約73億円の課徴金納付命令を受けた。国に法令違反を認定されたのだから、紛れもなく「不正」だが、それ以降も表現を変えなかった。方向性がいったん決まったら、軌道修正が難しい典型である。

 この東芝の姿勢に対して、メディアや法律関係者などから、「『不適切会計』というあいまいな言葉をなぜ使い続けるのか。『不正会計』と総括すべきだ」との批判が相次いだ。東芝社内でも「不適切会計なんて恥ずかしい。はっきり不正会計と言えばいいのに」という声が出ていた。その後、米原発での巨額損失が発覚して、世間の耳目はそちらに移っていったのである。

 ◇「不正会計」が4回、「不適切会計」が1回

 発覚から2年以上たつ今になって、一転、株主総会という公式の場で「不正会計」と言い始めたのはなぜか。まず、24日の臨時株主総会で、経営陣がこの言葉をどのように使ったかを見てみよう。

 総会は2時間52分にわたって開かれたが、綱川社長は会社側の説明のなかで「不正会計については、経理部門によるけん制強化や業務プロセス改革を進めると同時に、開示体制も強化している」と、さらりと1度だけこの言葉を使った。淡々と資料を読む形だった。

 さらに、株主から「なぜ不祥事を防げなかったのか」と質問され答弁に立った桜井直哉・執行役上席常務が「東芝は先進的なガバナンスの会社と見なされてはいたが、不正会計の問題の大きな原因の一つに、ガバナンスの不全があった」などと2度、この言葉を使った。桜井氏は、しっかりとアクセントをつけて「不正会計」と言った。使えなかった言葉を、ようやく使えるようになったと言わんばかりだった。これ以外に社外取締役が1度、この言葉を使った。

 一方、成毛康雄副社長が、株主から事前に届けられた質問への一括回答をするなかで、元の「不適切会計」の表現を使った。同時に会場内のモニターにも「不適切会計」と表示された。「不適切会計」が使われたのはこの1度だけ。気付いた株主は少なかっただろう。

 実は、東芝は株主総会に先立って2度、公式文書で「不正会計」という言葉を使っている。東証の「特設注意市場銘柄」の指定解除が決まったことを開示する10月11日の文書、さらに同20日に公表した「内部管理体制の改善報告」という文書のなかでだ。

 東芝広報は「第三者委員会の報告書の表現に合わせて『不適切会計』を使ってきたが、今回の指定解除の開示や改善報告を行うにあたり、とくにこれまでの反省とその後の改善を記載、報告しているため、不正会計という言葉を使用することにした」と説明する。

 ◇「不適切会計」と言い続けるメディアも

 さて、メディアはどうだったか。経済プレミアは、不正会計が発覚した15年から、東芝に関して139本の記事を掲載してきた。発覚後、しばらくは「不適切会計」という言葉を使ってきた。だが、同年7月に第三者委員会報告書が「意図的な利益水増し」を認定してから、「不正会計」を使っている。

 大手新聞の過去記事を検索で調べてみると、毎日新聞、朝日新聞は第三者委報告書が公表された前後から「不適切会計」をやめ、「不正会計」の表現になっている。日経新聞ではそのころから主に「会計不祥事」という言葉が使われ、最近では「不正会計」という表現も混在している。

 産経新聞は第三者委報告書以降、「利益水増し問題」と表記し、金融庁が課徴金命令を出した同年12月以降、「不正会計」という表現を使い始めている。

 一方、読売新聞は「不適切会計」という表現をほぼ一貫して使ってきた。東芝臨時株主総会の模様を報じた10月25日朝刊でも、いまだに「不適切会計」という言葉を使った。東芝はようやく「不正会計」に改めたが、読売新聞は今後、どうするのだろうか。

引用元: Youtube
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